当院は胃腸科ですので日々おなかが痛い患者さんがいらっしゃいます。ただおなかが痛いと申しましても、腹痛のチェックポイントとしては、早口言葉の様で申し訳ありませんが、上から食道胃十二指腸小腸大腸虫垂肝臓胆嚢膵臓脾臓腎臓尿管膀胱前立腺(男性)子宮卵巣(女性)に加え腹膜や動静脈、皮膚の帯状疱疹もあり、帯状疱疹を除いて体表から見ただけではどこが原因かさっぱりわかりません。

そこで我々は問診や身体所見に加え、各種検査を通して原因の目星をつけていくわけですが、幸いなことに病気の中には特有の痛みを持つものがあります。例えば虫垂炎。典型的な虫垂炎は、臍周囲の痛みに始まり時間の経過とともに右下腹部に痛みが移動してきます。実は臍で感じる痛みと後半の右下の痛みは実は別の痛みなのですが、それらを脳が混同してしまうのです。

虫垂にはT10-T11神経節からの交換神経が走っています。このT-10からの神経は同時にお臍あたりの皮膚の感覚も担当しているので、痛みの軽い虫垂炎初期では、虫垂か皮膚かどちらの信号かわからず、「お臍周囲が痛いのかな?」と脳が勘違いしてしまうのです。このような痛みのことを関連痛と言います。やがて炎症が進行し腹膜にまで達すると右下腹部の局所痛(体性痛といいます)が勝ってくるので虫垂周囲の激痛として自覚することになるのです。

また胆石発作も関連痛があります。こちらはT5-T9辺りの交感神経支配ですから、関連痛は臍より上の心窩部付近です。そして胆嚢の炎症が進行してくると本来の右上腹部に体性痛が出てきます。さらに進行すると横隔膜にまで炎症が波及することがあるのですが、そうなると横隔神経にまで波及することになり、右肩への放散痛として現れます。
意外に思われるかもしれませんが、急性心筋梗塞も腹痛を呈することがあり、問診だけで確定診断をつけることは至難の業です。いかに消化器内科がオンライン診療に向かないかということがお分かりかと思います。我々消化器科は患者さんのおなかに手を当てて診断する科ですので、腹痛時は来院をお勧めいたします。
