庇を貸して・・・

今年もインフルエンザを中心とした感染症の特集をニュースなどの報道番組で見かけます。番組では視聴者にわかりやすいようにフリップボードを用いて説明されることが多いのですが、そこに描かれているウイルス、目つきが悪かったりサングラスをかけていたりと、悪人顔であることが一般的です。私はいつもそこに疑問を感じるのですが、はたして彼らは悪党でしょうか?いやいや、罹ったら辛いし仕事も休まないといけないから当然でしょう?と言われればそれまでですが、我々を困らせるのが目的なのかは調べてみないとわかりません。そこで本日は彼らの埋もれた声をお届けするべく、ウイルスの立場からこの冬をみてみたいと思います。

 専門的な話をしますと、ウイルスは細胞質をもたず遺伝子情報である核酸もDNAかRNAの片方しか有していないため、自然科学界では生物の条件を満たさない特殊な「生物学的存在」とみなされています。不完全ボディのため自分達だけでは増殖できず、他の生物の細胞に寄生することで増殖をしています。

一本鎖RNA遺伝子の模式図

顕微鏡レベルのか弱いウイルスたちも、自然界の中で熾烈な生存競争を生き抜いています。学生時代の微生物の授業で、複数のウイルス性疾患が同時流行することは稀と教わりましたが、これはウイルス同士が縄張り争いをしているからだとされています。実際新型コロナ全盛期にインフルエンザは流行しませんでした。そしてコロナが落ち着いてきた昨年ぐらいからインフルエンザが盛り返してきています。そもそもインフルエンザ自体も感染力の強いA型が先に流行り、2月以降にB型が流行ります。彼らはウイルス同士の競争を耐え抜き、かつ宿主側の強力な免疫を突破し、細胞に入り込んで遺伝子情報を注入、私たちの体内に子孫を託して短い一生を終えるのです。

見ようによっては、ウイルスは子供達を残す一心で私たちの体を借りに来ているといえるのです。我が子を案じる親の立場でみてみると、ちょっといじらしいというか、分かり合えなくもない存在ではないでしょうか。感染症にかかるとネガティブな気持ちになりがちですが、地球上に生きている者同士、少しぐらい体を貸してやるよと鷹揚に構えられればいいですね。しかしながら、これはあくまで我々の体力がある時だから言えることです。体力が落ちている時にかかりますと肺炎などを併発し重篤化することもあります。庇を貸して母屋を取られるということにはならないよう、手洗いなどの感染防御はこまめにお願いします。