しゃっくり

 もう2日もしゃっくりが続いているという患者さんが来られました。しゃっくりは一過性のことがほとんどですから、そのうち治りますよと説明することが多いのですが、さすがに2日続くのは尋常ではありません。

 しゃっくりは吃逆(きつぎゃく)といい、横隔膜の不随意運動によるものですが、横隔神経・迷走神経・呼吸中枢などが刺激されるために起こります。脳腫瘍などの中枢神経系の病気や、脳から横隔膜まで走る横隔神経を圧迫するような胸部の疾患、横隔膜近辺の臓器の病気などが原因となることが多いので、まずは頭頚部や胸部の腫瘍を念頭に置きながら問診を進めていきますと、明け方に胸痛もあるというキーワードが出てまいりました。明け方の胸痛とくれば狭心症!と反射的に答えられない医学生は、まず医師国家試験に受からないのですが、実臨床ではそればかりではありません。明け方の胸痛にはもう一つ重要な疾患として、食道病変があります。食道は横隔膜に接しており、しゃっくりの原因となっている可能性がありますので緊急胃カメラを行いました。下に胃カメラの写真をお示しします。

診断名:重症逆流性食道炎(LA grade D)

下に示します正常食道画像と比べてもらえれば、違いが一目瞭然です。

 逆流性食道炎の刺激が横隔膜の神経に伝わり、しゃっくりが引き起こされたという症例でした。理論的にはありえるのですが実際にお目にかかったのは初めてでした。ボノプラザン20m服用で食道炎は劇的に改善し、シャックリもすぐに消失しました。

 しゃっくりがよく出る方は、胃カメラ検査を受けていただくのもいいかもしれませんね。