便秘

 皆さん、毎日快便ですか?朝食後にバナナ状の柔らかめの便がでていますか?

 今回は排便についてお話しようと思います。排便は朝がいいか、それとも夜がいいかとよく質問されるのですが、理想的には朝で朝食後がいいとされております。これは排便のメカニズムを考えると説明がつきます。生理学の話となりますが、人間は食べた食物を小腸で消化吸収しています。この消化吸収、消化酵素による科学的な分解と、蠕動運動による物理的な力が合わさって行われています。その後消化された残渣は大便として大腸に送られます。皆さんが寝ている間にも消化管は休みなく働き、大便をS状結腸に貯留していきます。そして起床後に朝食を摂ることで胃に食物が入ると、反射的に大腸に強い蠕動が生じてS状結腸の大便を直腸に押し出して便意が出現します。この反射を胃結腸反射、そしてこの強い大腸の動きを大蠕動と呼びます。もちろん朝食以降も蠕動は起きますが、大蠕動は1日1回、この朝食後に起きるのです。下剤の中には、就寝前に服用するものがありますが、これも朝の大蠕動を利用して排便につなげているのです。しかし、現代人は朝から忙しく、ゆっくりトイレにすわる余裕はないため、この大蠕動を効率的に活かせていない方が多いのが実情です。少し早起きして朝食後にゆっくり座ってみてはいかがでしょうか。

 たかが便秘と侮っていてはいけません。便秘の方の中で、膨満感と下痢を伴う方もおられると思います。中高年の方でこのタイプは注意が必要です。下痢は軟便もしくは水のような便が1日のうち3回以上出ることをいいます。感染症やストレス、慢性の腸炎などで起きることが多いのですが、時には悪性疾患によるものもあります。便が通過できない腸管の狭窄があることで、固形便が通過せず、消化液や水分のみがおりてきているからです。多くは大腸癌、特に直腸癌が疑われます。

 この場合は緊急手術をしないと早晩腸閉塞になってしまうか、運悪く憩室が近くにあった場合は腸に穴が開いてしまい、緊急入院となります。狭窄の解除は手術で腫瘍を取り除くしかありません。しかも直腸がんの場合は人工肛門となるリスクが高くなります。下痢便秘が続く場合は早めに受診いただくことをお勧めいたします。そして年に1回は便潜血検査を、受けていただくことをお勧めいたします。