良い星のもとでうまれた?

主訴:胃もたれ

経過:2週間ほど続く朝方の胃もたれで来院。採血検査に胃カメラ、腹部エコーを施行したところ、逆流性食道炎を認め内服加療で改善した。その際、腹部エコーで偶然胆嚢内に図Aのようなポリープを認めたため、ドップラー検査にて精査を行ったところ、図Bのように血流を認めたため外科紹介。

診断:胆嚢がん(StageⅢ)近傍リンパ節転移+

治療:腹腔鏡下胆嚢摘出術、所属リンパ節郭清、抗がん剤追加治療

胃潰瘍や胆石を疑って行った検査の過程で、たまたま悪性腫瘍が見つかった幸運な患者さんの一例です。胆嚢がんは予後のよくない癌の一つです。理由は複数ありますが、一つには胆嚢特有の事情があります。胃や大腸、肝臓などは臓器が大きく、癌が大きく育ち遠隔転移するまで時間を要しますが、胆嚢はサイズが小さく風船のような袋状の構造で、壁の厚さは1-2mmしかありません。ですので、がんは小さいうちからすぐに胆嚢の壁を突き抜けて、外側に露出してしまいます。こうなりますと腹膜播種をおこして一気にステージⅣの末期がんとなってしまいます。このように、胆嚢がんの予後の悪さは胆嚢の壁が薄いことと関連があります。困ったことに、手術の対象となるステージの胆嚢がんは、胆嚢結石がない限りほぼ無症状です。胆嚢ポリープをお持ちの方は、1年毎のエコー検査だけにもかかわらず、主治医がなかなか解放してくれないと思いますが、このようなポリープが癌化するサインを見逃さないためです。

俳優の(故)渡瀬恒彦さんが罹患されていた病気で、病気と闘いながら積極的に俳優活動をされておられた姿を、覚えておられる方も多いかと思います。胆嚢がんの治療のポイントは、早期発見早期治療につきます。今回ご紹介した患者さんのように偶然見つかることも多いので、ドックや診療の場で超音波検査をお受けいただくことをお勧めいたします。