5月に入り爽やかな季節となりました。町中を散策していると、色とりどりの花々が目を楽しませてくれます。5月に美しい花を咲かせる植物に、シャクヤクとシャクナゲがあります。名前の似ているシャクヤクとシャクナゲ、写真を見てパッと言い当てられますか?
A

B

答えはAがシャクヤク、Bがシャクナゲです。芍薬(シャクヤク)、石楠花(シャクナゲ)と漢字で表記すると区別がつきやすいかもしれません。
ともにキレいな花を咲かせるために人気がありますが、もちろんまったくの別物です。シャクヤクはボタン科ボタン属の「草本」です。草ですから冬になると地上部は枯れてしまいますが、春にはまた芽を出して美しい大輪の花を咲かせます。シャクナゲはツツジ科ツツジ属の常緑樹です。木ですから冬になっても地上部が枯れてしまうことはありません。宿根草のシャクヤクは、すっと伸びた一本の茎の先に一輪の大輪の花が咲きます。対してシャクナゲは枝にたくさんの花が集まって咲くのが特徴です。

シャクヤクには様々な薬効があります。鎮痛、鎮静効果のほか、筋肉の緊張を和らげる、血管の働きを良くするなどの効果があるとされ、古くから漢方薬として利用されています。そうです、お察しの通り、皆さんお馴染みのツムラ68番、芍薬甘草湯です。こむらがえりなどの筋肉痛でお困りの方は、来院いただければご処方いたします。対するシャクナゲには有毒成分のグラヤノトキシンが含まれているため注意が必要です。嘔吐、下痢、血圧低下、めまい、けいれんなどの中毒症状を起こす可能性があります。
名前が似ているが別物・・・。我々の診療の場でもたくさんあります。薬の名前はまるで間違い探しです。例えばムコスタにムコダイン、ムコソルバン。ガスターにいたってはガスコン、ガスモチン、ガスロン、ガストロームなどなど。これにジェネリック医薬品が加わりますので、薬局を含めてとんでもないことになっています。例えばフェブキソスタットにフェキソフェナジン。先発品ですとそれぞれフェブリクにアレグラとわかりやすいのですが・・・。

診察中の医師の頭の中は、病気と検査、処方薬が高速で回転しています。医師がカルテばかり注視していて患者さんの方を見ない時は、これらカタカナが目に染みている時かもしれません。
※5月12日追記:
インターネットニュースで、韓国で起きたグラヤノトキシン中毒についての記事がありましたので、アップさせていただきます。